ごあいさつ

　離婚事件は、一般の市民からのご相談を受ける弁護士（いわゆる「町ベン」といわれます）にとって、だれもが扱う最も基本的な事件の一つです。
そうした敷居の低さのせいか、弁護士の間には、離婚は法律の問題が関わることの少ない簡単な事件という見方が根強く存在しています。

　実際、若い弁護士が「離婚事件しか来なくてつまらない」とか「離婚事件は勉強にならないからやりたくない」と発言するのを、何回か耳にしたことがあります。しかしそういう考えは完全な誤解です。

　離婚事件の円満な解決のためには、人間に対する洞察や夫婦生活、社会に対する深い理解が必要です。ご夫婦それぞれの感情を抜きにして解決させることは決して容易ではなく、奥が深いものだからです。

　離婚も、結婚と同じく人生の一大イベントです。離婚をするかしないか、離婚をするとすればどのような条件でなら許容されるのか、その判断に依頼者の方の将来がかかっています。

　弁護士は、依頼者がどのような思いで結婚生活を送ってきたのか、今、人生の重大な岐路においてどのような選択をするのがベストなのか。一人ひとり境遇の異なる依頼者の方から丁寧にお話をうかがい、その気持ちを大切にしながら、最良の選択に向けてアドバイスをしていくべきなのだと感じています。

　その意味で、依頼者の方の話を十分に聞くことなく一方的に自分の考えを押しつけてしまうような弁護士や、依頼者の気持ちを軽くみて、とにかく「お金さえとれればいいじゃないか」といわんばかりに離婚を急がせる弁護士は、離婚事件に向いていないように思われます。

　事件の相手方で若い弁護士がつく場合もよくありますが、結婚生活を体験したことのないせいか、今ひとつ、当事者の気持ちが分からないのではないかなと感じるときがあります。

　当職は、常に、依頼者の方のお気持ちに寄り添いつつ、ベストな選択ができるようアドバイスさせていただきたいと考えております。